最近、「増毛」について、業界未経験のお客様から良く質問されますので、
今回は増毛についてお話したいと思います。
まずは増毛の定義からですが、いわゆる「かつら業界」の商品には、大きく分けて3つに分けられております。
1、かつら
2、増毛
3、育毛(メーカーによっては発毛)
の3つです。
番外編として、増毛に近いもので植毛や移植というものもありますが、これらは医療行為になりますので一般の増毛メーカーでは行なえません。更に実に様々な問題(勿論、メリットもありますが・・・)もありまして、この増毛法については、また別の機会にお話ししたいと思います。
そして、今回は「2、増毛」についてです。
まずは増毛の歴史ですが、某大手メーカーが人工毛を数本、1本の自毛に結び付けて毛を増やす増毛商品を販売したのが始まりで、意外とその歴史は古く、25年以上経っています。
1本の自毛に4本から6本、そして10本を取り付ける事で毛量を増やすものまで出来てきましたが、現在では2本から4本を取り付ける増毛法が主流です。
実はこの増毛、満足しているお客様は少ないのです。(過去のメーカー勤務での感想です)
毛を増やすと言う事で、イメージ的には「増毛は自然」というイメージでメーカーは広告をしていますが、
実際に増毛をしてみると、お客様が思うように増えない事が多いのです。
どういう事かと言うと・・・・
人間の髪の毛は約10万本と言われます。
そして薄毛の目立つ、前から天頂部の大体の面積は、頭髪の約2~3割弱程度ですので、2~3万本といったところです。
この3万本が減ってくると薄毛が目立つのですが、薄く感じ始めるるのは、やはり3分の1から半分くらい減ってきた頃でしょうか・・・そして、頭髪がさみしくなってきて、「そろそろ増毛でも・・・」と言う事になるわけです。
しかし、少なくなったその髪の毛本数、1万本から3万本です。
この脱毛分を補う為に人工的に増毛していくわけですが、一気に1万本を頭に増毛出来るわけではありません。これは、時間的な制約があるからです。
1時間に増毛を取り付けられる本数は、100ヶ所から150ヶ所です。
あとは、増毛タイプ(何本取り付けるか)によって違いますが、平均で1時間あたり600本から800本の増毛するのが標準的だと思います。
なので、5時間がんばっても3000本から4000本を増毛することしかできません。
(その5時間の間は、増毛メーカーのイスに座りっぱなしか、イスを倒して寝っ放しで増毛するわけです。余談ですが、これ位の長時間の施術の場合は、増毛を行なう技術者は数人入れ替わる事が多いです。)
そして5時間の増毛(頑張り)の結果、上記本数の髪の毛が増えるわけですが、脱毛した数には追い付きませんので
「増毛して毛は増えたけど物足りない・・・」となり、別に日に予約をして更に増毛の補充をしていくわけです。
しかし、脱毛が進んでいるから薄毛になったわけなので、当然せっかく結び付けた増毛も、自毛の脱毛と一緒に抜けてしまうわけです。
よく増毛のメーカー側としましては「増毛の取り付けは丈夫な毛を選んで付けるので大丈夫ですよ」といいますが、見た目は丈夫でもいつ抜ける髪の毛なのかは、誰にも分かりません。
もう一つ問題なのが、根元に増毛を結んでも毛が伸びるので、どんどん上にあがってくる事です。
上にあがれば根元は自毛一本になりますから、2・3カ月もすると、肝心の根元に増毛が無い状況になります。
更に、自毛1本に対して数本結び付ける為、毛先に重さが出て根元がつぶれやすくなります。
そして、人工毛が絡んだり、縮れたり、結び目がくしに引っかかったりして、自毛が抜けやすくなるケースもあります。更に、弱っている自毛に増毛を結ぶと言う事は、増毛の分の重さが自毛に負荷としてかかってくると言う事です。
結局、増毛前と増毛後を比べても見た目はあまり増えないで、自毛と一緒に増毛が抜けてしまう「使い捨て状態」になる事が多いのです。
と、まあここまであまり良い事は言っていませんが、そんな増毛にも最大のメリットがあります。
あまり増えた感じがしないので、「増毛しても目立たない」事です。
そして、このタイプの増毛が合う人もいます。
1、脱毛が進行しない方(生まれつきの薄毛や、女性の薄毛など)
2、髪の毛の伸びるのが遅い方(自分では判断が難しいですが・・・)
3、バーコードのスタイルの方(根元にボリュームが要らないから)
と、非常に限定されますね。
それでも、まずはチョットだけ増毛してみたい方にアドバイスです。
初めて増毛する時は、無料の増毛体験か、1000本以下で始める事です。
そして、最初に増毛本数をまとめて購入するのではなく、1回1回料金を精算できる増毛メーカーで行なうのが、非常に重要です。
まず最初に気になる部分に1000本以下を増毛したら、その後2ヶ月以上は様子を見て、自毛が伸びてきた時の引っかかりや、増毛が自毛と一緒に脱毛してきた時の状態等をよく観察する事です。
増毛と2~3カ月付き合ってみて、それで良い感じと思えば続けていけばよいと思います。
増毛というものは、数か月試さないとメリット・デメリットは分からないので、慎重に検討した方が良いです。
今回、増毛の費用については一切触れていませんが、次回の機会にお話したいと思います。
福井
ビーエスト代表
かつら大手メーカー2社で、技術職から管理職まで幅広く従事。ヘアケア業界では35年以上のキャリアを持つ。