目次
今回はかつらの素材に使われる「極薄の人工皮膚・極薄ネット」についてお話しします。
かつらのベース素材は非常に種類が多いですが、どのカツラメーカーでもある程度決まったものを使用する事は以前にお話ししました。
(以前の記事「かつらの選び方」をご覧ください。)
かつらのベース素材について
かつらは、基本的に肌色や黒のメッシュやPU(ポリウレタン樹脂)を使用する人工皮膚との組み合わせとなります。
それらの素材を用いて、いかに自然に見せるか?をテーマに作り込んでいくのです。
そんなかつらですが、10年~15年ぐらい前からでしょうか?
「前髪を上げられます!オールバックが出来ます!」的なかつらが登場しました。
一応、各社呼び名やジャンル分けをしていますが、当店では「エアスキン(極薄人工皮膚)」と呼んでいます。
これは、かつらのフロント部分に「極薄人工皮膚」と言われる非常に薄い人工皮膚を使用する事によって、額とかつらのベースの境(段差)が、かなり分かりにくくなるものです。
その為、生え際の毛量を少なく設定できるので、自然な生え際を演出できます。
昔は、かつらの生え際部分がある程度の厚みが有ったので、その部分が白く見えたり黒く見えたりしていました。
そういう状態なので、前髪を上げるともろにカツラベースが見えてしまい、不自然でした。
その後にかつらの生え際のベースを隠す為に、裏から髪の毛を植毛してベースの縁を髪の毛でカバーする「飾り植え(アンダーナッティング)」という技巧が主流になります。
そして更に、それが進化した「Fネット」と呼ばれる技巧が出てきました。
これは、かつらの生え際部分に肌色の薄いネットを2~3㎜くっつけてその部分に細かく植毛するやり方です。
これにより、かなり以下の症状が改善されました。
かつらの前髪を上げると
・生え際が黒く見える
・白くベースが見える
・フロントの毛量が多くて不自然
極薄かつらの登場
そして、その後にそのフロント人工皮膚部分自体を限界まで薄くして装着する「極薄かつら」と言われるものが出てきました。
実はこのような「極薄かつら」のようなコンセプトのかつらは昔からあったのですが、メーカー側も積極的に販売していなかったのです。
あるカツラメーカーが、かつら全部を極薄人工皮膚にして、残っている自毛は剃って装着するというCMを始めまして、それと同時期に別のメーカーでも上述の「生え際が出せる、前髪を上げられる」等のCMを大々的に展開して一気に世に広まったのです。
この頃から、極薄人工皮膚だけではなく、極薄のネットを生え際部分に「切りっ放し」で使用するかつらも多く出てきました。
そして今に至る訳ですが、現在では一部の根強いユーザーが使用するにとどまり、多くのかつらユーザーは「普通のかつら」と「極薄かつら」の中間ぐらいの製品を利用しています。
具体的には、極薄ではなく、「薄めの人工皮膚」を使用したり、それを「Fネット」と組み合わせる事で、自然さを向上させたりしています。
(当店でもそのような仕様の製品がメインとなっています。)
極薄かつらのメリット・デメリット
やはり、極薄人工皮膚にはメリットやデリットがありまして、メリットは「自然さが向上する」ですが、デメリットは「耐久性が落ちる、手入れが大変、自毛を剃る必要がある」等です。
中でも、自毛を剃って両面テープや接着剤で装着して、シャンプーの度にそれを繰り返すのは容易ではありません。
前髪部分に自毛がほとんど残っていないような人なら最適かもしれません。
当店でも「極薄人工皮膚」は扱っております。
ただ、上記のようなデメリットがあるので、誰にでもお薦めはしておりません。
かつらの使用歴があって手入れも熟知されている方や、もともと極薄かつらを使用されていた方などは、問題なくご使用されています。
普段使いはいつものかつらで、「旅行やイベントの時には、極薄かつらを使用する」なんていう使い方もよいのかもしれません。
先日も当店で長年使用されている方が、極薄人工皮膚を初めてご使用されました。
(以前は前髪を利用してかつらを装着していたが、自毛が薄くなり前髪もなくなってきたので、思い切ってご注文するとの事でした。)
結果、お届け後に
「いや~こういう製品なんですね。納得しました。大満足です」
とお電話を頂きまして、その後すぐにスペアとして追加のご注文を頂きました。
他メーカーで、極薄タイプのかつらをご検討される際には、担当の人にデメリットをよくお聞きの上、ご検討をおススメします。
そうでないと、
・すぐに壊れてダメになった
・毎日の手入れが大変
・肌がかぶれた
等のトラブルになるかもしれません。
どうかご注意くださいませ。
ビーエスト代表
かつら大手メーカー2社で、技術職から管理職まで幅広く従事。ヘアケア業界では35年以上のキャリアを持つ。